モバイルビットコインウォレットアンケート調査結果分析
先月Diamond Handsとしてモバイルビットコインウォレットに関するアンケート調査を実施しました。その結果の一部をコミュニティへの情報共有の一環として以下に公開します。
アンケートの目的
モバイルビットコインウォレットのマーケットシェアや利用に関する実態を定量化、分析することで、ビットコイン関連企業やプロジェクトへ情報を提供し、マーケティング効率やプロダクト改善のヒントなどを与えること。
調査の仮説と知りたいこと
日本ではどのモバイルビットコインウォレットが人気なのか?
マルチチェーン対応ウォレットをビットコインウォレットとして使っているユーザーが多いと聞いたことがあるが、これは本当か?
モバイルビットコインウォレットを選ぶ基準としてインフルエンサーの影響などが大きく、セキュリティやプライバシーは重視されていないのではないか?
マルチチェーン対応ウォレットを主に使うユーザーをビットコイン専用ウォレットに切り替えさせるのは難しいのではないか?
ビットコイン専用ウォレットはそもそも認知度が低く、機能や魅力があまり伝わってないのではないか?
等
回答者とバイアスについて
25年4月16日〜22日の間に合計322人がアンケートに回答。アンケートの回答者は主にDiamond Handsやビットコイナー反省会などを中心に募集した。
そのため、回答者はビットコインに対してポジティブなバイアスを持っている可能性が高く、実際のクリプトユーザー全体の実態と調査結果が大きく乖離している可能性があるのは注意すべき。
また回答者には抽選でビットコインの報酬を配ることで、回答者を増やす工夫をした。
ビットコイナーとクリプトユーザーの定義について
アンケート回答者のバイアスをある程度コントロールして有用な結果を導き出すために、調査結果を簡易的にビットコイナーとクリプトユーザーに分類して比較している
仮想通貨の保有割合の「大部分、もしくは全てがビットコイン」と回答した人を「ビットコイナー」、一方「ビットコインを含む複数の仮想通貨に分散投資」もしくは「ビットコインはほとんど持っていない」と回答したユーザーを「クリプトユーザー」とここでは定義する
調査結果
ビットコイナーとクリプトユーザーでメインで利用しているウォレットのシェアは大きく異なった
ビットコイナーはBlueWallet、Blockstream Green、Nunchukだけで合計46%ほどのシェアを持ち、ビットコインに特化をしたモバイルウォレットを使う人が多い
一方クリプトユーザーではBlue,Green,Nunchukをメインに使うユーザーの割合は5%に満たず、過半数のユーザーはPhantomやOKX Walletなどのマルチチェーン対応ウォレットをビットコインウォレットとして使っていることがわかった
ビットコイナーとクリプトユーザーではモバイルウォレットの使い方にも大きな差が現れた。
ビットコイナーのおよそ30%はモバイルウォレットを使っておらず、これはハードウェアウォレットなどを使って長期でビットコインを保有することを目的としているユーザーが多いことを示唆している。
一方クリプトユーザーでモバイルウォレットを使っていないユーザーは15%程度であり、ビットコイナーと比較してモバイルウォレットを使う頻度が高いと回答したユーザーも多い。クリプトユーザーにとってモバイルウォレットの活用度合いや重要性が高いことが伺える。
それぞれのウォレットの認知度についてもビットコイナーとクリプトユーザーで大きな違いが見られた。
ビットコイナーの間ではGreenやBlueWalletを認知しているユーザーはそれぞれ56%、72%と半数以上を占めるが、クリプトユーザーではそれぞれ33%、40%程度しか認知されておらず、クリプトユーザーの間でのビットコイン専門ウォレットの認知度の低さの課題が見られた。
一方、マルチチェーン対応ウォレットとして人気のPhantomとTrust Walletはクリプトユーザーからそれぞれ92%、84%の認知度を持っており、クリプトユーザーの間では圧倒的な認知や利用を持つモバイルウォレットが存在していることがわかる。
モバイルビットコインウォレットに求める機能として、「開発元への信頼」が絶対にないと困ると回答したユーザーは78%を超え、提供企業への信頼がウォレット選択の重要な要因になることがわかった。
他には使いやすさやプライバシー、セキュリティなどを重視しているユーザーが相対的に多く、機能性を重視するユーザーが多いことが伺える。
一方、調査前に重視されていると想定されていた日本語対応やサポートなどに関して重視している人は比較的少なかった。
これらの傾向はビットコイナーとクリプトユーザーの間でほぼ一定で、ユーザー層ごとの大きな違いは見られなかった。
GreenやBlueWalletなどのビットコイン専用モバイルウォレットを使う理由として、68%のユーザーがユーザー体験のシンプルさをあげている。
その一方機能性を選択の理由にあげるユーザーは比較的少なく、ビットコイン系企業への信頼やクリプト系プロダクトのセキュリティへの不安感の方が重視されていることがわかった。
マルチチェーン対応ウォレットを使っているユーザーはその他のウォレットへの切り替えについて柔軟な姿勢を持っていることがわかった。
マルチチェーン対応ビットコインウォレットを使っているユーザーの77%は複数のモバイルウォレットを使い分けており、88%がビットコイン専用ウォレットとの併用は検討できると回答している。
特に91%の回答者がセキュリティの非常に高いウォレットがあれば切り替え、もしくは併用したいと考えており、ビットコイン専用ウォレットには高いセキュリティや安心感を期待していることが伺える。
ライトニングウォレットを使っていると回答したユーザーのうち64%はWallet of Satoshiを使用している。これはWallet of Satoshiが初心者にも始めやすいカストディアル型のウォレットであり、ライトニングマルシェのセラーなどの多くもWoSを利用している
一方、ノンカストディアル型のライトニングウォレットのシェアは20%程度に留まっており、Zeus、Phoenix、Aquaなどがシェアを分け合う形になっている。
結論
マルチチェーン対応ウォレットをビットコインウォレットとして利用しているユーザーは特にクリプトユーザーで半数を超えており、業界全体で見るとビットコイン専用モバイルウォレットのユーザー数より多いと想定できる。
ビットコイン専用モバイルウォレットは全体として認知がまだ低く、メディアでの発信などを含めてまずは認知を高めることが大きな課題。
モバイルビットコインウォレットに求められているのは開発企業への信頼やセキュリティ、プライバシーなどの機能性であり、翻訳やインフルエンサーの影響度は比較すると低かった。
マルチチェーンウォレットをビットコインウォレットとして使っているユーザーは、セキュリティの高いビットコインウォレットへの切り替えや併用に関してはむしろ積極的な姿勢を示していた。
今後の展望
今回の分析はアンケートの結果の一部であり、より深いユーザー実態の分析や洞察に関してはリクエストに応じて発信していく予定。
今回のモバイルビットコインウォレットの調査に続き、今後ハードウェアウォレットや取引所の利用実態に関してのアンケートも実施予定。
次回以降、特にビットコイナー以外の層のユーザーの回答を増やしていくことで、業界全体のトレンドやマーケットシェアなどをより正確に把握する努力がさらに必要
また今回の結果は日本でのトレンドを指し示すもので、今後その他の国でも同様のアンケートを実施し、国ごとのビットコインユーザーのトレンドの把握や比較分析をしていきたい