株式会社Diamond Hands(本社:愛知県名古屋市、以下「Diamond Hands」)は周南公立大学(所在地:山口県周南市、以下「周南公立大学」)と業務委託契約を結びました。当プロジェクトでは最新のDecentralized ID(分散型アイデンティティ/DID)技術を利用したデジタル学生証システムの開発と実証を行います。検討にあたっては、大学に留まらないデジタル証明書としての発展を展望し、周南市とも連携していきます。
DIDの利用による利便性とデータプライバシーの向上
DIDはユーザー自身が自身の個人情報を管理する個人認証方法です。これを用いて、特定のサイトやデータへのアクセスを自己主権的にコントロールすることができます。DIDやVerifiable Credentials(検証可能な証明書、VC)を利用したパスワードレスログインや、証明書の改竄や偽造の防止は、分散型インターネットの基盤となる技術の一つとして注目されています。
本プロジェクトでは単純な学生証のデジタル化に留まらず、在籍の事実、氏名、生年月日、成績を含む履修履歴などの個人情報を学生自身が管理したまま、第三者が検証することを可能にし、利便性、安全性、プライバシーを同時に向上させることが期待されています。
本プロジェクトで開発されるデジタル学生証システムは、実証実験を経て早ければ再来年度にも実際に学生の身分証明等に実運用することを展望しており、DIDを利用したこのような取り組みは世界的に見ても先進的な事例と言えます。
Web5の採用と分散性と拡張性の追求
今般、Diamond Handsと周南公立大学とが共同で開発するデジタル学生証システムでは、特に米国Block社が支援するTBD社が主導するWeb5プロトコルを採用し、より分散性と拡張性の高いシステムを構築します。
Web5はDIDとVCを一つのフレームワークで統合し、分散型のアプリケーションの開発を容易にするプロトコルです。また、Web5は世界の標準化技術の管理団体であるW3Cが策定したDID標準およびVC標準に準拠しており、広く世界で互換性を維持した利活用が可能です。
今後DIDを軸にした多様なサービスが生まれることが期待されますが、これを実現する世界で最も期待されるツールの1つがWeb5です。なお、Web5ではデータの改竄を防ぐために記録のハッシュをビットコインブロックチェーン上に刻むことが可能で、ブロックチェーン関連技術との親和性も特徴の一つです。
DIDとライトニングネットワークの親和性と今後の展望
ライトニングネットワーク(ライトニング)とは、ビットコインを高速かつ低コストで移転可能にする技術です。個人が自らのデータを管理するDIDとVCは多種多様なデータのやり取りや新しいビジネス・モデルを生み出す可能性があり、DIDが生み出す新たなデータ市場と低額高頻度な資金移動の処理を得意とするライトニングとの親和性は高いと考えられます。
DIDを利用した学生証のシステムとライトニングを組み合わせることで、将来的には証明可能な個人の活動履歴とビットコインによるマイクロペイメントを関係づけることができます。たとえば、何かの目標を達成した時に自動で金銭的な褒賞が獲得できるなど、分散処理技術と自動化を融合させたインセンティブスキームを設計することや、学生証アプリからの実店舗への直接の支払いなどの可能性が広がっていきます。
Diamond HandsはDID /Web5のような分散技術への知見に加え、特にライトニングの開発や運用経験が豊富なビットコインの専門企業であることから、本プロジェクトで周南公立大学と提携することが決まりました。
また、Diamond Handsの海外での認知や繋がりを活用し、今後は本プロジェクトの成果を国内だけではなく、海外にも向けて広く発信していく予定です。
【周南公立大学福祉情報学部教授(4月から、同情報科学部教授)内田善彦コメント】
周南公立大学は2024年4月に情報科学部を新設し、新しい学生を迎えます。DIDやVCを用いたデジタル学生証の利用を通じて、秘密鍵を用いて自分の情報を自らが管理する、という情報化社会の進歩の利点を享受するために必要となる、最も基本的なスキルを体得できると思います。この経験は現時点では大学が提供する学習機会としては周南公立大学でしか得られないものと考えます。また、世界の最先端に常に追いかけている株式会社Diamond Hans様との協働を通じて、本プロジェクトが関係者にとって山口県に居ながらにして世界の最先端を直接体験できる機会となり、知識と経験という周南公立大学の無形資産が拡大することを期待します。
【Diamond Hands共同創業者CTO 小川裕也 コメント】
昨今、個人情報の漏洩やプライバシーの取り扱いが問題となっています。これらの問題は事業者にとっても大きな課題ですが、個人にも関わる問題です。DIDやVCなどの新たなテクノロジーを活用することで、個人が自身のIDや個人情報を管理できるようになります。しかし、その反面、データの管理は個人が責任を持たなければなりません。そのため、ある程度の情報リテラシーが求められます。本プロジェクトでは、周南公立大学の学生様や職員様と協力を通じて、個々人がデータ管理に必要な情報リテラシーを習得し、向上させることを目指しています。
【株式会社Diamond Handsについて】
Diamond Handsは日本の業界をリードするビットコイン専門企業です。2021年に日本でのライトニングの研究や普及を進めるためのユーザーコミュニティとして誕生し、その後規模や活動範囲を広げ、世界的に認知され多くの企業やグループと連携するまで成長しました。日本でのビットコイン関連事業をさらに加速させるため、2024年に法人化され、ライトニングを利用した画期的なサービスの開発、ビットコインエコシステム全体の活性化などを目的に活動しています。
https://diamondhands.technology/
【周南公立大学について】
周南公立大学は、「地域の持続的成長と価値創造のための成長エンジンとなる」というミッションを掲げています。2024年4月には、情報科学部、人間健康科学部(スポーツ健康科学科、看護学科、福祉学科)、経済経営学部の3学部を開設します。新たに入学する学生たちを地域とともに育成し、彼らの能力を社会貢献に活かすことで、地域の発展に寄与することを目指しています。また、学生の教育研究を支える教職員の知識や専門性を活かして地域の課題に取り組み、ミッションの実現を目指しています。
https://www.shunan-u.ac.jp/